夜10時。
家族はそれぞれの部屋に消え、リビングにはテレビの音だけが流れている。
缶ビールを片手に、なんとなくスマホを開く。
通知は来ていない。
それでも――指は迷わず、あのアプリをタップしていた。
「もう、この歳で何か起きるわけない」
そう分かっているはずなのに、
どこかで期待している自分がいる。
・メッセージが続かない
・手応えがない
・気づけばフェードアウト
それでも、やめられない。
なぜなら、ごく稀に――
“ちゃんと会話が成立する相手”が現れるからだ。
これは、そんな淡い期待を抱いた40代既婚男が、
「普通のメル友募集」という一見まともな投稿に手を出し、
見事に心を削られていく、俺の体験した話である。
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夜10時のリビングで
夜10時。
家族はそれぞれの部屋。
俺はリビングの隅で、缶ビール片手にスマホをいじっている。
つけっぱなしのテレビの音が耳を通り抜けていく中。
ピロン。
……いや、通知は来てない。
ただ、俺の指が勝手にサイトにログインしただけだ。
そう、例の“ハッピーメール”。
「もう大きなイベントは起きない」と思っている40代既婚男が、
それでも「もしかしたら」を捨てきれずに開いてしまう、日本最大の出会い系サイトである。
ピュア募集掲示板という名の希望
その日、俺は仕事の疲れが残る中“ピュア募集掲示板”を覗いていた。
大人の匂いがしない、あくまで“友達募集”。
罪悪感がやや薄まる魔法のカテゴリだ(薄まるだけでゼロにはならない)。
すると目に入ったのが――
「友達募集」の欄
少し年上らしき女性。
画像に顔は映っていない。
だが、清楚な服装。
スタイルも悪くなさそう(ここ重要)。
プロフィールも無難。
変にキラキラしていない。
そして趣味は――
温泉巡り。
温泉。
いいじゃないか。
俺も嫌いじゃない。
むしろ、女の次に好きだ。
そして募集文にはこうあった。
「なかなかメッセージが続きません(泣)
誰かメル友になって下さい」
……あー。
変な男に絡まれてたのかな。
かわいそうに。
(いや待て、これは当たりの予感では?)
俺の中の“これはイケるだろ”が目を覚ます。
無難の権化、出陣
俺はウキウキしながらメッセージを送った。
「はじめまして!掲示板での投稿見ました。
温泉巡りが趣味なんですね、自分も結構行くので、メールで気軽にお話しできたら嬉しいです。」
完璧だ。
無難&無難。
攻めない。
下ネタなし。
誠実100%。
なんて言ったって俺は
“普通”の権化のような男だ。
しかし毎回思う。
女性が初見で
「うわっ、この人面白い!」
と食いつくメッセージなんて、この世に存在するのだろうか。

……まあいい。
俺は普通で勝負する。
ピロン。
返事が来た。
「ありがとうございます!よろしくお願いしますね」
ふふ。
無難なメッセージ万歳だ。
こいつは年上のお姉さんをGETしたかな。
王道トーク、発進
さて、ここからどう仲良くなるか。
まずは王道。
趣味トークだ。
俺は流れを完全にシミュレーションした。
俺 「最近、どこか温泉行きましたか?」
↓
相手「〇〇行きましたよ、楽しかったです!」
↓
俺 「へー、いいですね!どんな感じでしたか?」
完璧なキャッチボール。
よし、送信。
「最近、どこか温泉行きましたか?」
ピロン。
「温泉行きましたよ!」
……。
ん?
行きましたよ?
いや、知ってるよ。
趣味にそう書いてあったからね。
行くよね、温泉。
これは、何かの前フリなのか?
キャッチボール不成立
気を取り直して。
「そうなんですねー。どこかいい温泉ありましたか?」
ピロン。
「ありましたよ。」
……。
そうですか。
あったんですね。
……終わり?
えっ?
あなたメル友欲しいんだよね?
俺の中の定義では、
メル友=メッセージを“やり取りする”友達
なのだが。
違うのか?
俺、何か勘違いしてる?

嫌な予感と探索射撃
このままだと会話が死ぬ。
なので、少し角度を変えてみる。
「メル友募集って書いてありましたけど、変なメッセージとかたくさん来てたんですか?」
ピロン。
「いいえ。私はちゃんと返信しているのに、なぜか皆さん途中でメッセージを送ってくれなくなるんです(泣)。普通のメル友が欲しいだけなのに…。」
……。
ああ。
皆さんの気持ちが、
今、少しだけ分かる。
会話を続けるって、
結構エネルギーいるんだよ。
でもな。
きっと彼女は緊張してるんだ。
慣れればきっと、楽しいメッセージをくれるはずだ。
俺はそう信じた。
40代、謎の粘り
そこから俺は、
ありったけのテクニックを投入した。
・共感
・具体的な質問
・軽いユーモア
・適度な距離感
・大人の余裕風味
しかし返ってくるのは――
「そうですよね!」
「いいですね~」
キャッチボールどころか、
ボールが毎回コロコロ転がって止まる。
たまに疑問形が来たと思ったら、
「普通そうじゃないですか?」
……刺さる。
俺の“普通”を否定するのやめて。
いやいやいや。
あなたも“普通のメル友”欲しいって言ってたよね?
真実に気づく瞬間
律儀に返信は来る。
未読無視はしない。
でも。
たぶん彼女は――
俺に興味がない。
それだけだ。
責める気はない。
人間だからな。
合う合わないはある。
でも。
「普通のメル友が欲しい」
って言葉を信じた俺の心は、
じわっと折れた。
そして静かに終了
俺は、そっとメッセージを送るのをやめた。
しかし、彼女からは来ない。
当然だ。
キャッチボールをしていないのに、
ボールは飛んでこない。
俺はビールを飲み干した。
ぷはぁ。
苦い。
明日の仕事、何からやろうかな。

それでもハピメを開いてしまう理由
正直、凹んだ。
40代、社会では一人前と思われている男が、
“普通のメル友”に振られる。
なかなかに滑稽だ。
でもな。
こういう人がいるからこそ、
この世界は面白い。
烈女タイプもいれば、
落ち着いた年上女性もいる。
そして、
会話がほぼ単語で完結する女性もいる。
予測不能。
カオス。
だから俺は、また開いてしまう。
ピロン。
通知が鳴るたびに、
心臓がドクンとする。
「もう大きなイベントは起きない」と思ってるくせに、
どこかで期待している。
――俺は、まだ終わっていないと。
普通を自称しながら、
普通ではいられなくなってきた40代既婚男。
今日もまた、
ハッピーメールをスクロールしている。
……次こそは、
ちゃんとキャッチボールできる相手と出会えるだろうか。
まあ。
懲りないよな、俺も。
\「メッセージが続かない…」で終わらせるな。/
40代でも、“ちゃんと会話できる女性”はいる。
👉 次はキャッチボールできる相手を探す
⚠ ドキドキ注意報(必須確認)
・これは40代既婚男性「俺」の体験談です。全員が同じ展開になる保証はありません。
・“普通のメル友”の定義は人によって異なります。単語返信が好きな方も存在します。
・既婚者の利用は各自の倫理観と自己責任でお願いします(ここ大事)。
・18歳未満(高校生含む)は利用不可です。
・利用規約・料金体系は必ず公式サイトで確認してください。
・メッセージが続かない場合、相手ではなく“相性”の問題かもしれません。
・深夜の登録はテンションが1.3倍になります(自己管理推奨)。