前編のあらすじ(ここまでの地獄)
歯医者帰り、気が緩んだ状態でログインした出会い系。
そこで届いた一件の「タイプ」――
それがすべての始まりだった。
相手は同年代の既婚女性。
しかしプロフィールは“既婚・隣町”のみという異常な情報の薄さ。
違和感を覚えつつも日記を覗くと、
そこには男への怒りをぶつけ続ける“メガトン級の闇”。
普通なら関わらない。
だが、麻酔で判断力がバグった俺は、なぜか返信してしまう。
そして――
・初手で「経験人数」を聞かれる
・なぜか“リア充認定”されて叩かれる
・タイプの理由が「写真が笑えるから」
・会話は終始、怒りのオート再生
さらに夜になると、
「やっほー、おっぱいぱい」
という意味不明すぎるメッセージで地獄が再開。
ポイントは削られ、精神も削られ、
ついには小学生レベルのケンカに発展。
「ブロックしろ」
「そっちがしろ」
という不毛な応酬の末、
俺はポイント切れで強制終了。
……のはずだった。
布団に入ったその瞬間、
「ねえ、寝たの?」
というホラーメッセージが届く。
そして追い打ちの一言。
「LINE教えて」
疲れ切った俺は、なぜかその誘いに乗ってしまい――
禁断のLINE交換へ。
ここから、さらに事態は加速する。

翌日:なぜか普通の大人になる既婚烈女
翌朝。
LINEの通知を見ると、彼女からの新着メッセージ。
恐る恐る開いてみると――
あれ? 普通だ。
「おはよう。仕事頑張ってね」
……なんだこの落差。
昨日までの「男なんて!!」「リア充が!!」の怒りスパークはどこへいった?
それから数日、彼女とのLINEはなぜか穏やかだった。
年齢の近い者同士の、ちょっとした愚痴や世間話。
むしろ普通の大人だ。
別人と入れ替わったのか? と疑うレベル。
ただし。
彼女の日記はエスカレートし続けていた。
「男の見る目が最悪だ」とか
「スタイル悪い女は人生詰んでる」とか
「今日も誰も私の良さを理解してくれない」とか。
烈女かよ。
いや、見たことないけど。
しかも、コメント欄は完全に閑散としている。
誰も返せない。
下手にコメントしたら焼き討ちにされそうだ。
そんな彼女だが、俺とのやりとりでは別人のように落ち着き、
いつのまにか話の流れで「会おうか」という話になっていた。

会う約束と“その後”の匂わせ
会う約束の場所は、隣町のカフェ。
健全に見えるが、その裏では大人の雰囲気も漂っている。
一応俺も男なので、「その後はどうする?」的な空気をほんのり出した。
彼女も否定せず、微妙に含み笑いのようなスタンプが返ってくる。
今まで怒り散らしていたくせに、突然まともになり、
しかも会うとなるとほんのり色気を出してくるのは何なのだろう。
人間って、こうも変わるものなのか。
そんな不思議な気配を感じながらも、俺は少しワクワクしていた。
怒りの烈女は、実物はどういう人なのか。
もしかしたら、意外な美人だったり?
いや、さすがにそこまで夢は見ない。
でも、ちょっとくらい期待してもバチは当たらないだろう。
カフェで会う日まで、あと数日。
そして迎えた前日――。
スマホが震えた。
彼女からだ。
開いた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。
とんでもないメッセージが届いていた。
それは、
今までの怒りLINEとも、普通モードの彼女とも違う――
完全に別次元の言葉だった。
烈女、まさかの宣言! そして当日の衝撃
ついに前日。
俺は翌日のために、オシャレなカフェを検索し、アクセスまで調べ、当日の服までベッドに並べて準備していた。
40代半ばのサラリーマンでも、デート前は高校生のように浮き足立つものである。
明日は久々のリアルでの出会い。
たとえ相手が怒り狂う既婚烈女でも、少しくらいロマンチックな期待をして何が悪い。
そんな時、彼女からメッセージが届いた。
開いた瞬間、心臓が止まるかと思った。
「カフェとか面倒だから、いきなりホテル行かない?」
…………は?
脳内のデートプランは一瞬で木っ端微塵になった。
オシャレなカフェでの会話?
そのあとゆっくり散歩?
――全部削除。強制アップデート。
いや、期待してなかったと言えば嘘になる。
男だもの。
でもだ。
いきなり? 今日の今までの流れで?
昨日まで「男なんて!」と怒りを撒き散らしていた烈女だぞ?
あの人が突然「ホテル行こ?」って何の転換点があったんだ。
日記では男性への怒りを百倍に増幅してたのに。
混乱しながらも、
男としての本能が勝ち、俺は返信した。
「……いいよ」
ただ、その後に続けたい言葉は山ほどあった。
『でも、デートの気分を返して欲しい』
『新調したシャツ返せ』
『有給まで取ったんだぞ』
だが、それらは大人の理性で胸にしまった。
翌日の予定はもう変えられない。
今さら「カフェがいい」と駄々をこねるのもカッコ悪い。
俺は「わかったよ…」とだけ送った。

当日の朝:待ち合わせ場所に向かう男の覚悟
そして当日の朝。
俺は有給のゆとりを享受しつつ、車でショッピングモールへと向かった。
待ち合わせは「モールの入り口」。
そこから彼女の指定のホテルへ向かう……らしい。
運転しながら、俺はふと昨日の怒涛を思い出した。
彼女の最初の苛烈さ、日記での男性への恨みつらみ、スタイルへのコンプレックス、そして唐突なホテル直行要求。
――これ、ほんとに会って大丈夫?
想像がどんどん暴走する。
・実物は鬼の形相の烈女で、ホテルに着くやいなや説教が始まる
・実はとんでもなく体格のいい女性で、怒りのヘッドロックをかけられる
・もしくは、想像を超えた激しい何かが始まる
妄想と恐怖が頭の中を駆け巡り、ハンドルを握る手に汗がにじむ。
ショッピングモールに着いた俺は、一度深呼吸した。
「まあ、何とかなるだろう……多分。」
ついにLINEが来る。そして予想外の展開
車内で待ちながら、LINE画面を何度も開いたり閉じたりしていると、ついに通知が鳴った。
「着いたよ、場所教えて」
ついに来た……!
心臓がドクンと大きく跳ねた。
俺はモールの入り口の位置を送り、
数十秒後――
視界に、ひとりの女性が近づいてきた。
そして、その姿を見て俺は凍りつく。
なんと、予想外に――
ついに姿を現した烈女(仮)と、俺の脳内エラー

視界に入ってきたその女性を見た瞬間、
俺の中で何かが静かにフリーズした。
――あれ?
怒りの日記で暴れてた人は?
「おっぱいぱい」の人は?
小学生ケンカを仕掛けてきた烈女はどこ行った?
そこにいたのは、
黒髪がすっと肩に落ちる、落ち着いた雰囲気の女性だった。
確かに、顔立ちは雑誌に載るような美人ではない。
でも、年相応で、無理に若作りしていない自然な感じ。
特に目元が涼やかで、ちゃんと人を見る目をしている。
そして――体。
日記であれだけ「スタイルが悪い」「貧弱」「終わってる」と書いていた体は、
どう見ても普通のスレンダー体形。
むしろ、同年代の男性なら「え、全然いいじゃん」と思うやつだ。
「……こんにちは」
ごく普通の、大人の挨拶。
俺は完全に戸惑っていた。
脳内で用意していた“烈女対応マニュアル”が一気に不要になった。
「は、初めまして……」
声が裏返らなかっただけ、褒めてほしい。
ホテルへ向かう車内、静かすぎる時間
車に乗り込み、エンジンをかける。
目的地は、彼女が指定したホテル。
だが車内は、拍子抜けするほど静かだった。
天気の話。
仕事の話。
この辺、変わったよね、なんて他愛もない会話。
昨日までの怒涛はどこへ?
怒りビームも、リア充叩きも、影も形もない。
俺は逆に不安になる。
あの烈女は、どこかに隠れているのでは?
だが彼女は、助手席で前を向き、
時々小さく相槌を打つだけの、普通の大人の女性だった。
部屋に入って、沈黙

ホテルに着き、部屋に入る。
ソファに腰掛けた彼女は、
急に言葉を失ったように、黙り込んだ。
スマホも見ない。
窓の外を見るわけでもない。
ただ、両手を膝に置いて、静かに座っている。
「……どうしたの?」
そう声をかけると、少し間を置いて、彼女はぽつりと言った。
「緊張してる。
男性経験、少ないって言ったでしょ」
その声は、
怒りでも、皮肉でもなく、
ただの不安だった。
その言葉が本当ならば、男性と自分を否定し続ける気持ちも、
何となくわかる気がした。
俺は、その瞬間だけ、
この人を少し可愛いと思ってしまった。
近づく距離と、大人の時間
俺は、ゆっくりと彼女の隣に座り、
そっと肩に手を回した。
驚いた様子はあったが、
拒まれることはなかった。
距離が縮まる。
呼吸が近くなる。
言葉は少なく、
でも空気は、確実に変わっていく。
そして彼女は身を委ね、互いの温度を確かめ合う時間が静かに流れた。
その後の、静かな余韻
ひと段落したあと、
二人で他愛もない話をした。
仕事の愚痴。
昔好きだった音楽。
どうでもいいテレビの話。
彼女はもう怒っていなかった。
俺も構えていなかった。
ただ、
「ちゃんと話せる相手」同士だった。
帰り際、
彼女は小さく笑って言った。
「…最初、変だったよね。私」
俺は正直に答えた。
「うん。
でも、今はそうでもない」
そして、またハピメ
家に帰り、
風呂に入り、
ベッドに横になったあと。
俺は、ふと思った。
今日の出来事は、
奇跡か?
事故か?
それとも、ただの偶然か?
答えは出ない。
でも一つだけ確かなのは、
画面の向こうにいる“やべぇ奴”が、
必ずしも“やべぇまま”とは限らない、ということだ。
俺は、歯医者帰りでもないのに、
またハピメを開いていた。
――人生、たまに変なイベントが起きるから、
やめ時がわからない。
正直に言う。
怖い。
でも、やめられない。
怒り日記の裏に隠れている本音。
会ってみないとわからない“化ける瞬間”。
あなたは、確かめる側ですか?
それとも、読むだけで終わりますか?
▶ 既婚烈女(仮)に出会う
⚠ ご利用前のちょっとだけ大事な注意事項
・18歳未満(高校生含む)は利用不可。大人のイベントは大人だけで。
・既婚者の行動は自己責任。家庭内会議の議事録提出は不要です。
・有給取得は計画的に。ホテル直行は突然やってきます。
・プロフィールと実物に多少の差がある場合があります(人生も同じです)。
・怒り日記=実物も烈女、とは限りません。化ける可能性あり。
・新調したシャツ代は返金されません。男の勲章です。
・通知音で心拍数が上がることがあります。自己管理を。
※奇跡の保証はありませんが、何も起きない保証もありません。